三の焦点

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それと入れ代わりになるように、赤い髪の騎士が部屋に入って来た。 精悍な顔立ちには小さな火傷の跡がある。 「よおっ」 と、手を上げて気さくに声をかけて来るが、顔にはまるで身に覚えがない。 勝手に部屋内部にあった椅子に座ると、レーヴェに向き直る。 「お初にお目にかかる。俺の名はレッドレイ。レッドレイ・クリフ・トリュアス。神誓王国メルテシオン、天翼騎士団所属の騎士さ。まあ、そう言っても天翼騎士団は俺以外全滅しちまったから、微妙な立場だがね」 「メルテシオンの騎士……」 レーヴェは反芻するように言葉を漏らす。 目の前の騎士は何故かレーヴェをじっと見つめてきた。 不思議に感じてレーヴェは目を白黒させる。 しばしレッドレイは少女を見つめていたが、首を軽く捻った。 「……やはり、少し彼女に似ているが……。まあ、年齢が違うか……」 勝手に一人で納得するレッドレイに、レーヴェは怪訝な顔をする。 記憶にはないが、相手が既知の人間なのかと疑問に思う。 「僕に身に覚えが?」 「いや、失敬。これでも意外と顔が広い方でね。君と似た人を知っていたんだが、まあ、他人の空似だろう」 「はぁ……?」 レッドレイの答えに、レーヴェは生返事で返した。
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