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朦朧とした意識を覚醒させたのは、頭に響く嫌な痛みだった。
偏頭痛のように、短い感覚でこめかみに痛みが走る。
(いっつ……。何だこれ……)
目を開いたつもりが、辺りは真っ暗で何も見えない。
「どこ……よ、ここ?」
両脚に激しい痛みが走る。
不思議に足を見るが、真っ暗で何も見えない現実に直面した。
仕方なく直に触れて確認するが、足に別段変わった所はない。
ただ、自分の体が濡れている触感が伝わってきた。
「……水?」
足元には、妙なぬめりのある液体を感じる。
地面の上に何か流れているようだった。
それに、何か鉄臭い。
「とにかく……どこだよここ」
足元に手を這わせながら先に進む。
所どころに何かが転がっているのだけは分かる。
手で触れた中に、よく知る感触があった。
皮膚――と感じるよりもっと分かりやすい感覚。
手だ。
誰かの手に触れたのだ。
暗闇の中に、自分と同じ境遇の人間がいる事に安堵を覚える。
「ねえ、ちょっとここは何処? 何が起こっているの?」
話し掛けるが返事は無い。
「ねぇ、ちょっと起きてよ!」
腕を揺すってみるが返事は一向に返ってこない。
苛立ちから、身体を大きく揺らしてみた。
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