94人が本棚に入れています
本棚に追加
「メルテシオン王家の者の遺体だからな。回収するのは当然なんだが、特に副団長が怒り狂っていてな……。まあ、とにかく捜索は命懸けでやるはめになっている」
苦笑いを浮かべた顔には、何故か憐憫の翳りが見える。
「僕が見たのは、そのガルンって人が敵を倒しまくっている所ぐらいで、申し訳ないけど他は何も覚えていないよ」
何故か強く手に持っていたチェーンを握りしめた。
妙な怖気が走る。
あの戦場を思い出していると、まるで“手足を握り潰されて殺された”ような錯覚を起こす。
顔色が悪くなったレーヴェを見て、グライドは何かを感じ取ったようだった。
雑に頭をかくと苦笑いを浮かべる。
「悪い悪い。記憶喪失者に記憶を思い出せとは、本末転倒だったな。それが出来れば記憶喪失とは言わんよな」
「……」
「それにしても、あの馬鹿は何処に言ったんだ? これじゃあ、探すのが骨だぜ」
肩を落とすグライドを、レーヴェは沈黙したまま見つめた。
けだるそうな中年の騎士は、その仕種とは裏腹に精悍な目つきをしている。
面倒臭いように見せているが、始めから捜索する気は満々だ。
レーヴェはそれを感じて、意を決した。
「あの、僕もその捜索に参加させてもらっても良いですか?」
最初のコメントを投稿しよう!