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浮き上がった岩盤の影から、闇に紛れてシミター使いが浮き上がる。
繰り出される斬撃を、ガルンは川下りする木葉のようにぬらりくらりと躱していく。
それを援護するように、横に回り込んだハルバート使いが高速の突きを撃ち放つ。
繰り出される刃の雨。
しかし、その全てをガルンは刀も使わずに全て避け続ける。
まるで、ギアがいきなり一段跳ね上がったような、不自然な速さ。
「馬鹿な?!」
驚愕する二人をよそに、ガルンの意識は彼等が持つ武器に注がれていた。
全て黒い。
余りに遊びの無い、無骨な漆黒の塊。
フォルムで武器の形は理解出来るが、どこにも継ぎ目などが見えない。
刀に纏わり付いたボーラも同様だ。
不意に空気を裂く音が響く。
飛来するボーラが二つ。
一つを躱しながら、もう一方を刀で切り払う。
だが、案の定、先ほどのように刀に絡み付き、今度は手首にまで纏わり付く。
「届いた!」
ボーラ使いが満足気な笑い声を上げる。
その瞬間、ガルンは腕に急激な重さを感じた。
いや、そのような感じしか、ガルンの認識域では理解出来なかったのである。
黒い光りが手首から腕に這い上ってくる。
ガルンはその感覚に目を見開いた。
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