孤影を追う者

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「確かに不自然な点は多々あるな。殿下の遺体を持ち去った、元王宮近衛騎士団ガルン・ヴァーミリオンは戦後直後のコンディションだ。体力の疲弊もあるが、冥魔族に受けた傷が治っているとは考えにくい。馬を奪ったとしても、その状態で追いつけないのは不自然だ」 ウォータルは眉間にシワを寄せて唸る。 頭脳派の彼には不自然な箇所が在りすぎて、納得がいかないのだろう。 「確か冥魔族の魔術、“冥法”はダメージと一緒に呪いがかかるんだよね? 傷が治りにくいと聴いたよ。覚えてるかいレーヴェ?」 アスラージュは焚火にかけていた珈琲をカップに入れると、レーヴェに差し出した。 レーヴェはそれを受け取ってから、大きく首を振る。 「化け物は見たような気がするけど、冥魔族とやらは倒される所しか見てないよ。彼は一切ダメージを受けた感じはしなかったけど……」 そこで口を閉じた。 珈琲の芳しい香が鼻腔をくすぐる。 アスラージュの私物の珈琲豆は、かなり高価なものに感じた。 「とりあえず、このまま南下してカシアジイーネ連邦共生国に向かう」 ウォータルの指示に、クロシードとレーヴェは不思議そうな顔をした。 アスラージュだけは、優雅に珈琲の匂いを愉しんでいる。 「南東に向かえばメルテシオン領ですよ? 彼に悪意が無いのならば、メルテシオンに連れ帰ると思いますが?」
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