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「う~ん。彼は特殊な生い立ちのうえ、王族を嫌っている節があるからね。素直にメルテシオンに戻るとも限らない」
「そうなのですか?」
「ただ……、彼はパリキス殿下の忠実なワンコではあったからね。今回の行動も、遺体を安全な場所まで運びたかっただけだと思うけど」
クロシードの疑問に、アスラージュは珈琲を啜りながら答えた。
ガルンの忠誠ぶりは、王宮近衛騎士団の中では定評がある。
第四王女であるパリキスのみと言うのが玉に瑕ではあったが。
「どのみち我らは南下する。メルテシオン領土内ならば探しようは幾らでもあるが、カシアジイーネ連邦共生国に入られると後々厄介だ。戦争後の今の時期だから国境も易々と突破できるが、情勢が安定してしまえば、侵入もおいそれと出来なくなるだろう」
宣言したウォータルは、珈琲に一口つけて少々驚いた顔をした。
行軍用の糧秣珈琲どころか、生半可な喫茶店より遥かに味が良い。香ばしいコクのある味が口中に拡がっていく。
王宮近衛騎士団同士の馴れ合いは意外と多いが、ウォータルはその手の馴れ合いを無視している。
アスラージュの珈琲も味わうのは初めてだ。
「確かにウォータルの案に不服は無いよ。とくにカシアジイーネ連邦共生国は小国が集まった群国家だ。内乱もかなりある。干渉や侵入は時間が経つほど難しくなるからね」
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