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それに彼等は知らない。
魔剣士ガルンが開花させた黒い焔の存在を。
「まあ、戦闘になるとは限らないかな? どのみちガルンも手負いだろうし、必ず何処かで処置をする筈さ」
アスラージュはわざと陽気な口調で言葉を紡ぐ。
勝てないから戦わないと言う訳にはいかないのだ。
「処置?」
「この地方は肌寒いとは言え、遺体をそのまま運び続けるのは不可能だからね。何処かでそれ相応の術式をかけたりする筈って事だよ」
レーヴェの質問に、アスラージュはさらりと答える。
ガルン追跡を始めた時から織り込みずみの予測だ。
遺体の運搬。
それの一番の問題は遺体の保持にあたる。
それをクリアするには、魔術などで身体の状態を保全しなければならない。
その観点から、魔術の使えないガルンは必ず何処かの町などに寄ると、容易に予測出来るのだ。
「遺体保全の魔術は、雑にしない場合はかなり難易度が高い。それの処置に半日以上かかるケースはざらだ。その間ならガルンは遺体からある程度離れている可能性は高い。そこを奪取するのが、第一手段だ」
ウォータルは踏ん反り返りながら宣言する。
ある程度の戦略プランは既に練られているらしい。
しかし、それは余りにも希望的算段に過ぎないのは、言ったウォータルが一番分かっていた。
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