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装備品を一通り抱えて外に出る。
夜の風はひんやりと寒かった。
軽く身震いしてから辺りを一望する。
簡易的に造られたとは言え、救護施設自体はかなり良い出来だ。
それがズラリと並んでいる。
それだけ怪我人が多いことを物語っていると言えるだろう。
少し離れた所には兵士用のテントがまばらに広がっている。
そのまま進んで辺りを見渡すと、もの凄い数の野営の火が目に入った。
冥魔大戦に参加した兵士数は四十万人に近い。
戦後数日では、撤収作業は始まったばかりだ。
「何をしている」
警備兵らしきものに声をかけられた。
よく見れば、あちらこちらに警備兵が見える。
壊滅したとは言え、完全に冥魔族が死滅したとは限らない。
それに、この一大脅威が消えた今、近隣の戦力バランスも怪しい所である。
特に戦後処理の問題が山積みだろう。
それが如実に出るのが領土争いだ。
冥魔大戦の原因を引き起こしたマドゥールク共和国は、自分達が呼び出した冥魔族によって壊滅している。
既に自治が出来る状態では無い。
となれば、“どこかの国”が保護と言う名目でマドゥールク共和国に介入するのは目に見えている。
間違えれば、そのまま新しい領土として接収する可能性も高い。
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