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孤影を追う者 #2
「アスラージュ……さんは魔術師か何かですか?」
「ん? 僕かい? 僕は違うよ。僕は……」
「何時まで談笑している! 朝日は昇ったぞ。出発準備だ」
アスラージュが答えようとしていると、ウォータルの怒声がそれを阻んだ。
少し先に設置されていた、野営テントからウォータルが出て来る姿が見える。
アスラージュは苦笑いして肩を竦めると、
「僕らも準備しよう」
と言って、テントに踵を返した。
ガルン・ヴァーミリオンに追いつくため、一行は朝一番で直ぐさま出発を開始した。
朝食も干し肉、乾燥パン、チーズと水を少量のみだ。
レーヴェは記憶にはなかったが、乗馬経験があったようで四人は騎乗して先を急ぐ。
相変わらず地平は枯れており、まるで荒野を駆けるような気分は払拭出来ない。
朝日か夕焼けか区別がつかないような、微妙に赤みかった日差しを進んでいると、先頭を走っていたアスラージュが突如馬を止めた。
他の三頭もそれに倣う。
「どうしたアスラージュ?」
ウォータルが視線で二人に警戒を促す。
美貌の騎士は、ゆったりと辺りを一望した。
「うーん。結構いるね。磁場が乱れている。しかし……何でこんな辺境にいるんだろう」
首を傾げる仕種にも優雅さが。
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