孤影を追う者 #2

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(アンデットは火に弱い) 手の中でチェーンを回す。 耳に留まるような、高音の響きが放たれる。 「トーラス呪詠式・ソロ“波立つ炎塊”」 空いている左腕を左方向に払う。 すると空中に炎の地平線が現れた。 溢れ出した炎の津波が、サンドウォーカーを次々に飲み込んで行く。 (出来た!) レーヴェの顔に笑顔が浮かぶ。 滑らかな音響魔法。 しかし、逆方向からアンデットの群れが迫る。 「くだらん」 ウォータルは眼鏡を整えると、迫り来るサンドウォーカーに向かって指を鳴らす。 次の瞬間、身震いするような渇いた音が大気を走る。 迫り来るサンドウォーカーの群れは、一体一体一瞬で凍り付けになっていた。 呪文の詠唱など一切皆無。 特殊能力。 この世界において、パティキュラーマスター(特殊能力使い)と呼ばれる、特異な能力の保持者は少なくはないが、魔法が一般的に広まっている為に、レアな存在としての誤った見識は多い。 一般的に詠唱を必要とする魔法よりも遥かに能力発動時間が速いために、魔術師よりも上位のクラスとされている。 その強力な力を見ても、残りのサンドウォーカーの歩みは止まらなかった。 当然だろう。元より彼等は死んでいる。恐怖など微塵もないのだ。
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