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◇
「あっちゃ~」
と、棒読みで感想を述べたのはアスラージュだった。
クロセリスとの戦いの後に、気を利かせて逃げ出した馬と無くした鉄球を拾い、仲間の元に帰ってきた第一声がこれである。
そこには巨大な氷の華が咲いていた。
中には、三人の人影が封じられているのが見て取れる。
それが誰かは言うまでも無いだろう。
「敵を取り逃がすとは腕が落ちたかアスラージュ?」
悪態をついたのは、氷の華の前に陣取るウォータルだ。
その横には、腕を治癒しているクロシードの姿があった。
レーヴェは少し離れた所で、馬の面倒を見ている。
「相変わらず容赦ないな~ウォータルは」
「貴様こそ手緩いぞアスラージュ」
「しかし、ここまでやらなくてもいいんじゃないか?」
「馬鹿か貴様は? 我々の任務を忘れたのか。今は一刻を争う時だ。邪魔に成りそうな障害は少ないに越した事はない。敵を見逃すなど以っての外だ」
合理的過ぎて面白みが無いと、アスラージュはぼんやりと考える。
王宮近衛騎士団の仕事は栄えある職務だが、城勤めが長すぎるデメリットが存在した。
外出任務と言うのは、そんな武闘派で慣らした人間にはこの上ない娯楽と言えよう。
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