79人が本棚に入れています
本棚に追加
バレルは走りながら、両手の平を叩く。
その瞬間、両手に赤い靄が生まれた。どちらかと言うと赤い泡の郡体のように見える。
「燃え■れカス!」
ガルン目掛けて赤い靄を投げつけた。
ガルンはそれを上半身を反らすだけで躱そうとし――
「?!」
直前でそれは大気で爆ぜて豪炎と化した。
溢れる炎の波紋。
それはガルンを飲み込みむと、渦を巻いてそのまま消え去る。
しかし、それを見てバレルは何故か目を細めた。
(手応えが……?)
警戒した瞬間――ガルンが背後に現れた。
目を剥くバレルの胸を、背後から刀が貫く。
「滅陽神流歩法・黒霞」
ガルンの声が背後から耳元に届いた。
心臓を貫いた一撃は、完全に即死クラスの致命傷である。
だが――バレルはそこで狂気的な笑みを浮かべた。
体から茶色い靄が溢れ出す。
ガルンはそれに不吉なモノを感じて、後方に飛びのいた。
その靄に触れたマントの端が、まるで風化するように砕けていく。
「おしい、外し■か」
「……?!」
バレルは舌打ちしながら振り返る。
完全に即死の筈だが、赤髪の青年は何食わぬ顔だ。
そこでガルンは背後に忍び寄る影に視線を送る。
既に精霊の瞳で動きは把握済みだ。
最初のコメントを投稿しよう!