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「確かに常識的に考えれば、敵を傷付けずに倒すのは至難の技だ。普通に考えれば、大規模魔術でも使った方が遥かに楽だろう」
「なら、何でガルン・ヴァーミリオンだと思うの?」
最後に質問してきたのはレーヴェだ。
頭の中に黒い炎の姿が過ぎる。
あらゆるものを焼き払うと言うより、あらゆるものを飲み込む深淵のようなイメージ。
背筋を凍らせるような悪寒が走る。
「奴は滅陽神流と名乗る、自称神殺しの技を使うと聴く。もしかしたら体術の発勁に似た力があるのやも知れん」
ウォータルの言う発勁は、体術における衝撃伝播の武術と言うよりは、気功による内部破壊の意味合いが強い。
外傷が見えないだけで、内側にダメージを受けて死に至ったと言う仮説だ。
「気法剣士とやらが使うアレかい? 僕はお目にかかった事がないが、それでも即死の威力は無いと思うけどね」
アスラージュは納得いかないとばかりに切り返す。
どちらに転んでも、即死と言うのは考えにくいのだろう。
「とにかく此処で考え混んでいても時間の無駄だ。全員全周警戒しながら先に進む。クロシードは定期的に防御魔法を全員に張れ。負担が大きいとは思うが、即死クラスの攻撃を受ける可能性は捨てきれない。死ぬよりはマシと思え」
ウォータルはそう告げると、さっさと馬に飛び乗ったのだった。
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