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今では朽ちるのを待つだけの身だが、ガルンは何とか安らかに眠れる場所までは連れていきたいと思っている。
しかし、それには迅速に解決しなければならない問題が提示される。
死した肉体はやがて朽ちるからだ。
単純明快にして、自然の摂理。
星から生まれた命は星に反り、世界に還元される。
その摂理からは誰も逃れられない――ように見えるが、何故かパリキスはそれからは外れているようだった。
少女の遺体は常に淡い月光りのようなものを薄く放っており、身体に腐敗の兆候は見えない。
それは神降ろしをした過去の影響か、神に呪われた影響か、はたまた神器として膨大な神霊力を内包していた影響か。
何の影響の効果かはガルンには分からない。
ただ、それが普遍的に続くとは限らないだろう。
ガルンは可及的速やかに、パリキスの肉体保持に努めなければならないと考える。
しかし、今のガルンは致命的な問題を抱えていた。
“虚理の殺意”。
冥魔大戦においてガルンが怒りから覚醒させた感情の力だ。
相手に“死”と言う概念を侵食させる、狂気の殺意。
世界の狭間を行き交う、虚空の殺気だ。
冥夢の幻域において、その怒りを発散するように冥魔族を皆殺しにして回ったが、それでも完全に怒りを鎮静化出来ていない。
漏れでる殺意。
それが問題なのだ。
何せ精神抵抗が低い者は、その“想い”に潰されて狂死してしまうのだから。
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