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「なっ、何だよ! その言い方! そこまで言わなくても良いじゃないか!」
レーヴェは顔を赤らめて手足をジタバタと動かす。
初めてガルンに恐怖を感じずに発した言葉だが、当人はそれに気づいていない。
「それだけの元気があれば、“この先の戦い”もやっていけるな」
ガルンはそう告げると、レーヴェを軽々と子供をあやすように地面に降ろした。
「貴様にはこのさき苦難の道しか残っていない。それは死者の道と生者の道が重なり合う岐路だろう。そこで貴様は心の強さが、立脚した意志が求められる」
ガルンの言葉をレーヴェは不思議そうに聞いた。
何か急に小難しい話になった気がする。
何かの比喩なのか、例え話なのかも分からない。
「その苦難に立ち向かうのも、呑まれるのも貴様次第だ。本当にどうにもならなくなった時は……俺が貴様を殺してやる」
「何……それ?」
その宣言に目を点にする。
ガルンによる殺害予告は、死刑宣告に等しい。
それを成し遂げる力を彼は完全に有している。
心底不安がるレーヴェを見て、ガルンは何故か蒼い狼を思い出した。
生死を告げる存在とは、常に心を殺さなければならない。
居た堪れない気分を抱え、ただ成り行きを見定めると言うのは、存外気分の良くないモノだ。
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