未完のノクターン #2

3/27
前へ
/35ページ
次へ
「なっ、何だよ! その言い方! そこまで言わなくても良いじゃないか!」 レーヴェは顔を赤らめて手足をジタバタと動かす。 初めてガルンに恐怖を感じずに発した言葉だが、当人はそれに気づいていない。 「それだけの元気があれば、“この先の戦い”もやっていけるな」 ガルンはそう告げると、レーヴェを軽々と子供をあやすように地面に降ろした。 「貴様にはこのさき苦難の道しか残っていない。それは死者の道と生者の道が重なり合う岐路だろう。そこで貴様は心の強さが、立脚した意志が求められる」 ガルンの言葉をレーヴェは不思議そうに聞いた。 何か急に小難しい話になった気がする。 何かの比喩なのか、例え話なのかも分からない。 「その苦難に立ち向かうのも、呑まれるのも貴様次第だ。本当にどうにもならなくなった時は……俺が貴様を殺してやる」 「何……それ?」 その宣言に目を点にする。 ガルンによる殺害予告は、死刑宣告に等しい。 それを成し遂げる力を彼は完全に有している。 心底不安がるレーヴェを見て、ガルンは何故か蒼い狼を思い出した。 生死を告げる存在とは、常に心を殺さなければならない。 居た堪れない気分を抱え、ただ成り行きを見定めると言うのは、存外気分の良くないモノだ。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

104人が本棚に入れています
本棚に追加