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未完のノクターン #2
そして、目の前の少年ガルン・ヴァーミリオン。
二十歳に満たない少年は、まるで幾重もの死地を乗り越えた歴戦の勇者――と、言うよりは人殺しに明け暮れたアサシンの様な陰気な風貌に思える。
彼は余りに何も掴めない。
まるで抜き身のナイフのような鋭利な殺意を醸し出し、聖骸を守る手負いの獣のようだ。
今はガルンも落ち着いているし、クロシードの精神防壁も効いている。
それでも背筋を凍らせる恐怖を感じるのは、理屈ではない。
「アスラージュにウォータル……メルテシオンの皆は信用出来ると思う。ただ、国益に関係している間だけかも知れないけど……」
その言葉を聞いて、ガルンは無造作に枝の上にレーヴェを投げ捨てた。
落ちないようにレーヴェは慌てて木にしがみつく。
「答えは及第点だ。メルテシオンは……特に王宮近衛騎士団は要人警護に特化した部隊だ。人を裏切る人間はいない。正し、それはメルテシオンの意向あってのものだ。それに、メルテシオン総てが信頼出来る訳じゃない。それに気づいているなら、何とか自分の足で道を進める筈だ」
ガルンはそう告げると木の枝から飛び降りた。
まるで魔法でも使ったかのように、軽やかに着地する。
レーヴェは慌てて上体をガルンに向けた。
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