116人が本棚に入れています
本棚に追加
あっけらかんと青年――クェイガーは奇妙な事を口走った。
見た目は二十代後半のようだが、このふてぶてしい態度からもっと若い年齢にも見える。
「分からないって、どう言う意味さ!」
「分からないものは、分からないと答えるしかありませんな~。申し訳ないが記憶に無い。俺は女性に嘘はつかない主義でして」
「……? それじゃ、部屋以前の記憶はどーなんだよ?」
レーヴェの質問に、クェイガーは右上の方を意味なく眺める。
「それが、それも曖昧でしてな。名前以外はとんと覚えていない。もしかしたら記憶喪失かもしれません」
真剣なのか適当なのか、良く分からない物言いで自分の回答に頷いている。
レーヴェはあまりの事に目を白黒した。
「はっ! くだらねぇ。何だこの茶番は? 俺は円城連夜。同じく名前ぐらいしか覚えてねぇーよ」
吐き捨てるように赤毛の少年――円城は呟いた。
「エンジョウレンヤ? 妙な発音の名前だな? 東方の出か?」
「知るかボケ! 覚えてねぇーって言っただろうが? てめぇーの耳は飾りか」
がなる少年をクェイガーが宥める。
それを見ながら、レーヴェは疑問に冷静さを取り戻す。
記憶喪失。
記憶の無い三人の人間が、偶然一カ所に集まる。
最初のコメントを投稿しよう!