伍の焦点

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あっけらかんと青年――クェイガーは奇妙な事を口走った。 見た目は二十代後半のようだが、このふてぶてしい態度からもっと若い年齢にも見える。 「分からないって、どう言う意味さ!」 「分からないものは、分からないと答えるしかありませんな~。申し訳ないが記憶に無い。俺は女性に嘘はつかない主義でして」 「……? それじゃ、部屋以前の記憶はどーなんだよ?」 レーヴェの質問に、クェイガーは右上の方を意味なく眺める。 「それが、それも曖昧でしてな。名前以外はとんと覚えていない。もしかしたら記憶喪失かもしれません」 真剣なのか適当なのか、良く分からない物言いで自分の回答に頷いている。 レーヴェはあまりの事に目を白黒した。 「はっ! くだらねぇ。何だこの茶番は? 俺は円城連夜。同じく名前ぐらいしか覚えてねぇーよ」 吐き捨てるように赤毛の少年――円城は呟いた。 「エンジョウレンヤ? 妙な発音の名前だな? 東方の出か?」 「知るかボケ! 覚えてねぇーって言っただろうが? てめぇーの耳は飾りか」 がなる少年をクェイガーが宥める。 それを見ながら、レーヴェは疑問に冷静さを取り戻す。 記憶喪失。 記憶の無い三人の人間が、偶然一カ所に集まる。
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