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「ようやく来たか寝坊姫」
雑貨屋から何やら箱を抱えて現れたクェイガーは、レーヴェを見るなり札束を手に捩込んだ。
「旅に必要そうな物を見繕ってきたまえ」
「……このお金」
嫌そうな顔で言い淀むレーヴェの耳元に、クェイガーはそっと顔を近づる。
「これは報酬だ。昨日の夕方にバウンティーハンターの斡旋所を見てきたのさ。この町に小金稼ぎレベルだが、都合の良いターゲットがいたんだよ」
「……本当ですか」
怪しむ視線にクェイガーはウインクする。
「何なら斡旋所を見てくるかい? まあ、“ついでの荒稼ぎ”は犯罪スレスレだがね」
そう言うとクェイガーは笑いながら、箱の中身をあさり出した。
世の中には、バウンティーハンターギルドと言うものがある。
早い話が賞金稼ぎ専用の、賞金首斡旋所だ。
加入料と使用料以外は一切資格が入らない為、誰でも使える利点がある。
運営側は勿論、賞金代金の一割あたりをピン撥ねしているので何ら問題も起こらない仕組みだ。
嘘か本当か分からないが、レーヴェは渋々そのお金を持って店に入る。
今は奇麗事ばかりでは足踏みするばかりだ。
クェイガーの強引な行動力はレーヴェには無いものである。
それを少しは見習うべきかと、少女は本気で考え始めた。
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