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『それに、俺を手に入れる事で何かしらのファクターを得ることにはなる筈だ。状況に何かが……。まあー、それすら因果の内かも知れんがね。変わる可能性は高いって寸法よ』
そのまま銀の蓮は、下品な笑い声を上げ始めた。
レーヴェはその不快な声を振り払うように頭を振った。
デルエペラのお陰で、この奇妙な現状の片鱗を実感した気がする。
しかし、何をすればそれが改善されるのかは全く分からない。
既知の魔術知識では、それを覆すには専用の大規模魔術が必要になる。
それに必要な魔術師の数も、触媒も一国規模の尽力がなければ不可能だ。
そんなものを一個人がどうこうできるものでは無い。
レーヴェは仕方なくゆっくり頷いた。
『では契約を結ぶとしようか? 俺の上に手を翳せ』
レーヴェはその言葉に従い、呪符とケースを外してデルエペラの上に手の平を翳す。
するといきなり蓮の花弁の一つが、外れて手の平に突き刺さった。
激痛にレーヴェは声を上げる。
「なっ?! 何するんだよ」
流れ出る血潮が蓮に降り懸かる。
朱に染まった姿は本物の蓮に近づいた印象だ。
『諦めろ。血と痛みを持って契約とする儀式だからな。痛みは生と死を等価値にし、魂の垣根を取り払う。その状態の魂にバイパスを構築する』
レーヴェは手の平から拡がる激痛に声を張り上げる。
信じがたい痛みは、一瞬で意識を刈り取っていった。
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