92人が本棚に入れています
本棚に追加
円城はそこで口をパクパクと開けた。
続く言葉が出てこないらしい。
そのまま、顎に手を当てて険しい顔をして唸り出す。
「記憶をみんな欠如してるんだから、無理に思い出すのは無理だよ」
レーヴェの言葉で円城は首を傾げていく。
上体自体を傾け出して、クェイガーは呆れてため息をついた。
「まあー、いいんじゃないか? 俺の記憶から欠落した単語なだけかも知れんしね。しかし……お前の技は何なんだ? 魔力の気配も、気の気配も無いが?」
「そんなもん気合いに決まってんだろ」
「気合い? 気合いでこれは無いだろう」
クェイガーは苦笑を浮かべて砕け散った巨人の腕を眺めた。
殴りつけた場所はたいしたダメージは見えないが、見えない力が後方に抜けたように爆ぜ割れている。
(内気功……? それにしては威力がデカイね~)
近づいて巨人の拳に触れてみる。
拳と言っても蟹の外皮だ。
殻と言っても過言では無い。
触れた感触は分厚い鋼である。
「気合いは気合いだ。俺は昔から拳一つで全てを叩き潰してきた気がする。本能で分かるぜ」
拳を握りしめる円城は、何故か頗る嬉しそうだ。
胡散臭そうに見つめるクェイガーを見て、円城は何か閃いたように顔を輝かせた。
最初のコメントを投稿しよう!