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吹き飛ぶ蟷螂人間の反対側から、蟋蟀人間の蹴りが放たれた。
完全なる真後ろからの攻撃。
蟋蟀の蹴りは円城の背中にヒットした。
勢いで弾き飛ばされそうな体を、足を踏ん張って踏み止まる。
円城は背中をさすりながら振り向くと、蟋蟀人間を睨みつけた。
「いてぇーだろがぁ、虫野郎!」
アッパー気味に放たれた右フックが顎を捉える。
蟋蟀人間は上昇気流に乗った鳥のように、綺麗に空に舞った。
「次に標本になりたい奴は前に出ろぉ!」
円城はハウゼンベリーに向き直ると、笑みを浮かべて再び走り出す。
その姿を見て、ハウゼンベリーは疑問に目を見開いた。
(なんだあのガキは?! 動きはずぶの素人なのに、あの破壊力は?!)
彼が用意した虫人間は強化に強化を重ねた兵隊だ。
表組織はアダマンタイト並、筋繊維はチタン合金並、神経系も反射の極限まで鍛えてある。
素手でどうこう出来るモンスターでは無いのだ。
一体いれば百人の兵隊と渡り合えるスペック。
その兵隊がまるでおもちゃの様に砕かれていく。
その猛威を見ながら、クェイガーは薄く笑う。
「あいつ、必殺技名なんて叫んでいないじゃないか」
横目で見てから、飛び掛かって来る虫人間を見定める。
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