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レーヴェはクェイガーと話し込んでいる、赤い甲冑の男の前に割って入る。
「“冥夢の幻域”への進攻部隊の現状は?」
唐突の質問に、男は顔全体で不愉快そうな表情を浮かべた。
クェイガーはともかく、他の二人は素性が知れない。
同様の礼節が必要かも疑わしい上、情報を開示していいかも謎だ。
「既に集合地点付近を北上中の筈だ。筆頭指揮官補佐のクェイガー様の方が、状況を把握してるのでは?」
向けられた視線にクェイガーは愛想よく答える。
「彼女達は某国の特使でね。情報に乏しい。最新の情報を欲しいのだろう。内緒だぞ?」
辺りを気にするような仕草に、男は疑い半分だが頷いて見せた。
彼はクェイガーと言う人物を信頼しているようだ。
(罪悪感はあるが……。まあ、しゃないわな)
クェイガーは口先八丁で場を納めると、直ぐに先を急ぐ事にした。
◇
カシアジイーネの馬を借り、レーヴェ達は一路北上していた。
此処は既にマドゥールク共和国領だ。
神誓王国メルテシオンに向かうならば直ぐさま東に向かわねばならないが、カシアジイーネの兵士達の手前、北上して冥魔族との決戦地“冥夢の幻域”に向かうフリをしなければならない。
国境からの目視距離外に出るまでは仕方が無いと言えよう。
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