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望まぬ過去 #2
レーヴェは胸中でそう呟くと黒コートの姿を捜す。
研究所の中枢に行く必要などない。
見張り役で良いのだ。
先ずは外をうろついている一人を見つけて略取する。
三人がその算段で眼下の人探しに躍起になっていた為だろう。
彼等は一つ、想定外の事柄がある事を失念していた。
「よ■やく到着か」
唐突に三人の背後から声がかかったのだ。
唖然と三人は背後を振り返る。
そこには黒いコート姿の人影が二人いた。
正しく想定外。
自分達が先に相手に発見されると言う、致命的な状況に陥るとは。
状況のまずさに直ぐに気づいたのはクェイガーだった。
(まずい! 丘陵から施設を見るため、後ろは断崖絶壁だ。奴らの後ろしか撤退する道がない)
飛び降りても風使いの能力で二人を抱えても着地は可能だが、そんな目立つ事をすれば相手に存在が露呈してしまう。
相手の戦力が分からない以上、敵のテリトリーにおいそれとは入りたくはない。
そんなクェイガーの心配を余所に、円城はしたり顔で何故か拳を鳴らしている。
「パリキス・キ■ガ・メルテシオンの探索はど■なっている? 我々に残さ■た時間は余りないぞ」
黒コートの馴れ馴れしい口調に、三人は疑問に顔を見合わせた。
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