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研究所を抜け出した三人は高台に足を運び、そこから見える噴煙に目を向けた。
その付近に青い虎を連れた、妙な昆虫の腕のような大剣を持った青年の姿が見える。
それと対峙する黒コート二人の姿が見えるが、どちらかと言うと劣勢のようだ。
「あれが冥魔黎明衆……。嫌な風を運びやがる」
クェイガーはその姿を見て苛立った顔をした。
失われた記憶の何かが引っ掛かるらしく、嫌悪感が込み上げて来る。
青い虎を見た、レーヴェも似たような感覚に苛まれていた。
「これからどうすんだ? 黒コートの連中は、今一何をしたかったか分からねぇ。黒幕もさっぱりだ」
苛立っているのは円城も同じだが、その怒りは別のものに向いているようだった。
破壊される研究所の姿に目が向いている。
「取り合えず、この場は離れますか。冥魔黎明衆が……冥魔族があいつ一人とはとても思えんしな。黒コートの連中も向こうから接触すると言っていた。一先ずパリキス王女がいるメルテシオンの軍隊を捜し、その付近に潜伏しながら黒コートの接触を待つ。それが賢明と思うが?」
クェイガーの提案に二人は頷いた。
その言葉を聞いて、レーヴェは何故か楽しそうな顔をする。
「それに、待っていれば向こうから来てくれるのは調度良いよ。これなら勝てる」
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