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そこでレーヴェは頭を押さえた。
『――災いの種』
『――の歪みとなっている、卿らネメシスの代行者のみ』
鈍痛が思考を妨げる。
(誰かの……言葉を聞いた? 重大な事を忘れている……ような)
傷みのせいで考えが纏まらない。
黒コートと自分との共通項。
至極単純な何かがあったような気もする。
(でも、もし僕らが仲間だと仮定しても、記憶を奪う理由が分からない。それに黒コートの連中は僕らが記憶喪失だとは知らない……。この矛盾がある以上仲間の可能性は低い……?)
難しい顔のレーヴェとクェイガーを余所に、円城は足元の資料を手にとってマジマジと眺めてから目を細めた。
(くだらねぇ……)
その資料の文字はあまり読めないが、幾つかの文字と載っている絵姿には見覚えがある。
円城はそれを丸めると壁に向かって投げ捨てた。
(奴らと仲間な分けがねぇーよ)
円城は心の中で毒づくと、大仰に体を伸ばした。
「うだうだと悩んでいてもしょうがねぇーよ。奴らが仲間だと思っているなら好都合だ。このどさぐさに紛れて、情報を集めようぜ!」
円城はそう言うと一人部屋を出て行く。
丸められた資料に記載されていた文には、最近聞いた不愉快な記号が印されていた。
それはマドゥールクの偵察隊に紛れていた、研究所員の一人が零した言葉と同じである。
『HL-003L』と。
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