望まぬ過去 #3

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      ◇ 近づく足音に反応して、痛みをこらえてレーヴェは立ち上がる。 目の前の偉丈夫。 ガズンと呼ばれた黒コートは、哀れむようにレーヴェを見つめた。 「……これを“黒き■鬼”用の切り札に■ようとしていたのか? 疑問が残るが……そ■でも貴重な戦力だ。黙ってついて来るならば、これ以上危害は加えん。納得行かないな■ば、武力で平伏させるまでだが……どちらを選ぶ?」 ガズンの言葉に、レーヴェは右手に持つトーラスチェーンを握りしめた。 この距離ではトーラスを回すより、明らかにガズンの拳の方が速い。 気づかれないように小声で魔法を唱える――そんなあからさまな行動は敵対行動の何物でもない。 立ち上がってはいるが、レーヴェの身体は満身創痍に近い。 元々、魔術師に肉弾戦など向いてはいないのだ。 せめて相手が平均的な武芸者ならば、奇を衒う行動をする意味もあるやもしれない。 しかし、相手は達人の域だ。 それも近接戦闘のプロフェッショナルだろう。 ここまで接近されては、魔術師に勝てる要素は見当たらない。 (それでも……) レーヴェの瞳に意思の光りが宿る。 戦いを諦めない不屈の闘志。
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