望まぬ過去 #3

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(ここで引いたら駄目だ! ここで怖がったら……ボクはまた、何時ものボクに戻ってしまう。記憶を無くして、あの闇の世界で縮こまるボクに!) 頭の中に記憶の断片が溢れかえる。 暗い洞窟で迫る幽冥獣の姿が。 青白い聖なる狼の姿が。 華のように輝く器が。 赤髪の青白い顔の女性が。 覚えの無い死の投影の数々。 されど、それを乗り越えなければ恐怖に飲み込まれる。 死は畏れるものだが、それに囚われては生きながら死んでいると同じだ。 (死ぬのを恐れて、立ち止まって自分を失うなら、死を覚悟して自分を勝ち取るために前に進む!) レーヴェは腕を突き出した。 「アンフォールド【展開】!!」 防衛用に身体に備えた、有りったけの簡易障壁を展開する。 物理防御と魔法防御。 どちらも魔術障壁を突破された場合の保険に過ぎない。 威力はたかが知れているが、最速で発動出来る魔術はこれしかないのだ。 (一撃を防いで、トーラス呪詠式を使う!) ゼロ距離からの魔術攻撃。 無駄だとしても、ここで諦める訳にはいかない。 それはレーヴェの決意の現れでもある。 抗う事を諦めたら、後は飼い犬に成り下がるしかない。
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