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「哀れな」
ガズンがそう呟いた時には、いつの間にか正拳が心臓に触れていた。
完全なノーモーションからの一撃。
達人の域に達した者が使える、予備動作なしの無拍子打突。
初動さからの打撃予測を消すために、習練に修練を極めた者が放てる一撃である。
流麗過ぎる動きには無駄は皆無。
まさに近接戦闘のエキスパートの技と言えよう。
心臓打ちの一撃は衝撃を全身に波濤させ、身体を硬直させる。
第二撃に、相手の意識を完全に刈り取る一撃を放つ為のお膳立てだ。
殺すつもりなら、これに発勁を混ぜれば心臓破裂で即死である。
簡易防御魔術では威力の軽減は微々たるものだ。
終焉が見えた連携攻撃。
決まれば終わりの足音が一瞬で訪れる。
拳が胸に触れた刹那に、そう感じたレーヴェの意識が心臓が大きく波打った。
意識だけが一瞬で加速する。
体の中を鼓動が鐘を鳴らすように鳴り響く感覚。
気付けばレーヴェの身体から淡い黄色光が漏れだしていた。
拳を繰り出したガズンは大きく目を見開く。
拳に有り得ない手応えが伝わってきたからだ。
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