望まぬ過去 #3

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「何だこ■は?!」 拳は手の平で受け止められていた。 “レーヴェの胸から突き出ている掌”に。 いつの間にかレーヴェの胸に沿って逆さ五芒星、ダビデの魔法陣が展開されている。 レーヴェの瞳孔が大きく開き、黒い光が燈っていく。 「自己封印メビウスリンク先行解放。時空干渉虚影眼起動。シンギュラリティ・ゲート先行展開」 額と背中に、幾何学的な赤い魔法陣が浮上する。 額には変形ペンタグラム、背中には二重の螺旋立体魔法陣。 高音の鈴虫の鳴き声のような音と共に、レーヴェの胸の魔法陣から人の上半身が現れた。 青い長髪の少年が。 「リンク・リインフォース【繋がる援軍】起動。来たれ“聳弧【ショウコ】・蒼”」 レーヴェの声に続いて少年は雄叫びを上げた。 正確にはいななきか。 至近距離に起こった力場に、弾き飛ばされる様にガズンは吹き飛んだ。 しかし、半分以上は自らの跳躍であり、本来のダメージは綺麗に受け流している。 だが、突如現れた少年は、一瞬で眼前にまで追い縋ってきた。 打ち込まれる打撃を、ガズンは空中で器用に受け流す。 右ストレートの内側に左手の甲を這わせ、攻撃方向を外側にずらしながら、接触中の甲を力点に体を半身に回転させる。 そのまま遠心力を乗せた右肘を少年の鳩尾に叩き込む動きは、化勁の見本のようだ。
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