望まぬ過去 #3

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外なる紫眼は不可解に思いながらも後は追わない。 空中戦の不利差を理解しているからだ。 しかし、かなりの高さに上がったクェイガーの周りの大気が、渦を巻き始めたのを見てからようやく失策に気づいた。 「そうだったな。 貴様はフー■ス・クェイガーだったな。 カシア■イーネ連邦共生国、六征の一人」 風征クェイガー。 カシアジイーネ連邦共生国、最強の精霊使いの一人。 その立場に上り詰めた実力は伊達ではない。 たった一人で一個大隊と渡り合う力を持つのが六征である。 クェイガーは己の持つ風の力の特性から、団体戦には向いていない。 風は元来広範囲攻撃なのだ。 その有り余る力の余波のために、仲間がいては全力を発揮できない。 だが、今のように完全に分散した状態なら話は別だ。 「我が翼に触れる百エアリアス内、総ての風精霊に命じる。その大いなる翼を持って我が眼前の障害全てを吹き飛ばせ!」 逆巻く風の乱気流を見て、外なる紫眼は歯ぎしりして同じ言葉を唱え出した。 「我が翼に触■る百エアリアス内、総ての風精霊■命じる。その大いなる翼を持って我が眼■の障害全てを吹き飛ばせ!」 それを見てもクェイガーの顔のは余裕は消えない。 始めから勝敗の決まった賭けに挑むギャンブラーのように。
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