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怒号のように鳴り響く声が大地を席巻していた。
始まった戦争の迫力に、しばしば緊張しながら推移を見つめる。
レーヴェ達三人と二匹は、メルテシオン軍の後方に紛れ込むように侵入していた。
まるで、良く分からない行列に並んでいるだけのような錯覚に陥るが、足元に転がる死体の塊と血臭が意識を現実に引き戻してくれる。
所々で阿鼻叫喚と爆発が起きていた。
戦端がどこかしこでも開かれている。
「オイオイ。近付く前にお陀仏とか嫌だぜ?」
円城の頭に戦争のビジョンが浮かぶ。
経験した事は無いが、何故か戦争の記憶は頭にあった。
まるで安全な場所から、ただ戦争らしきものを眺めていた様な妙な感覚。
戦争を擬似体験したような曖昧な記憶は、無くした筈の過去の残滓だろうか?
転がっている死体の無惨さに顔を歪める。
下顎を残して顔上部が無い。
手足が明後日の方向に向いている。
とてつもない怪力で握り潰されたように感じた。
少し進むと妙な光景を目にした。
数十人の兵士が巨大な化け物に、次々と槍を突き立てる姿が見える。
「幽冥獣……冥魔族の不死の使い魔だ。研究所付近でやり合ったが、あれは一体倒すのにも骨が折れるぞ」
クェイガーは苦々しい顔で呟く。
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