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マドゥールクの調査団は、冥魔族数人の部隊にどれだけの損害を被ったのか?
クェイガーはあの戦いで痛いほど知っている。
幽冥獣は戦わずに無視するのが、一番賢明な判断だと言えるだろう。
「とにかく、俺達の目的はあくまで黒コートだ。この戦争に関わる必要はない。オッケー?」
そう呟いた時には、円城は拳を振り上げて走り出していた。
「知るか!! 俺の前に立ちはだかる敵は、等しく全て殴り倒す!」
叫び声の勢いのまま、力の限り拳を幽冥獣に叩き込む。
一撃。
まるで小石を蹴り飛ばしたような勢いで、幽冥獣は吹き飛んだ。
周りにいた兵士達が、呆然とその様子を見送っている。
円城は満足そうに腕を回すと、近場の敵目掛けて猪突猛進して行く。
クェイガーは額に手を当てて首を振った。
レーヴェも愛想笑いを浮かべるしか出来ない。
その腕を朱が引っ張った。
物凄い不機嫌そうな顔で足元を眺めている。
それは蒼も同様だ。
レーヴェも同じように足元を眺めた。
熱湯に浸かった後のような、妙な気怠さを感じる。
(冥夢の幻域の吸奪結界の効果……。地上でもこれ程感じるなんて)
冥夢の幻域。
それは冥魔族が作り上げたフロンティアだ。
領域に入る生命体全ての力を奪い続け、それを冥魔族に還元する魔の領土。
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