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死の世界の入口だ。
レーヴェは一瞬身震いした。
死を連想するイメージが浮かんで来るが、頭を振って振り払う。
(もう、後には退かない。ボクは前に進むと決めたんだ)
顔を両手で軽く叩くと、前を見据えて歩き出す。
死の国は足元に広がっている。
本当の戦いはこれからだった。
◇
「ちょっとは……、地上は片付いた見たいだね」
レーヴェは乱れた呼吸を整えながら、額の汗を拭った。
地上の冥魔族は、何者かが使った一撃でかなりの数が倒されている。
それでも、辺り一面に敵がうごめいていると言うのは、気が安らがないものだ。
不死身を胸とする幽冥獣。
攻防能力が逸脱した冥魔族。
この二つと戦っていると、どれだけの時間を費やしているかが分からなくなる。
冥夢の幻域の入口とされる、洞窟にたどり着く事すら容易ではない。
一体の敵を倒すだけで、四国の兵士がバタバタと倒れていくのは、恐怖を駆り立てるには十分だ。
地下に入れば敵の数は格段に増える。
その中を進むのは、地獄に足を踏み入れるのと同義であろう。
(この中を最深部まで進むんだ……)
生唾を飲み込む。
レーヴェを挟むように進む麒麟兄妹のおかげで、近距離攻撃を受ける心配はない。
幽冥獣とまともに肉弾戦が出来るものは、そうはいない。
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