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それが二名護衛についていると言うのは心強い。
だが、それ以上に今は沢山のメルテシオン軍と一緒だ。
圧倒的な数で互角の戦いをしているが、それが激減する地下に不安を覚えない筈がない。
「それでもやるしかない」
そう言い聞かせようとして、レーヴェは足を止めた。
記憶を――過去を手に入れるためだけに、ここまで危険を犯す必要があるのか?
命を天秤にかけてまで、それを手に入れる必要があるのか?
今になって漠然とした迷いが現れる。
「うおらぁあ!」
そんな事を微塵も感じさせない円城の声が響いた。
素手で幽冥獣を殴り飛ばすと言う、離れ業をとり続けている。
その顔には微塵の不安も見え隠れしない。
自分を見つめる視線に気づいたのか、円城はレーヴェに顔を向けた。
「辛気臭い顔してんじゃねぇーよ! 考える前に手を動かせや! 入口に向かう前に死ぬ気か! それとも尻尾巻いて逃げるか!」
「そんなつもりは……そんなつもりは無い!」
「なら、シャキッとしろや!!」
円城は不敵に笑うと、弾き飛ばした幽冥獣を再び殴りに走り出した。
それを見て、レーヴェは小さくはにかむ。
自分の迷いを見透かされたような、心の中を覗かれたような気恥ずかしさを感じる。
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