88人が本棚に入れています
本棚に追加
その為に、移動のために命を捧げる人間は少ない。
そんな事をするのは狂信者か、命を天秤にする程の弱みを握られているか、相手を余程信頼仕切っているかぐらいだろう。
命を売り払う覚悟を、普通の人間は持っていないものだ。
「まあ、存在係数の低い……弱い人なら多く運べるけどね」
「ザコを大量に運んでも意味ねぇーっつう事か。 しかし、相手を信用出来るなら気にする必要はねぇーと思うけどな」
円城は自身の眉間に中指を押し付けながら、背後にあった木箱に寄り掛かった。
信頼と信用。
人と人の絆を結ぶ、確固たるものは果たしてどれだけ存在するものか?
円城にはその手の疑いを、全く気にしないのかとレーヴェは不思議に思った。
「まあ、待て。相手が信用出来るからと言っても、それだけで安心とは限らないだろう?」
「はぁ? 信用出来るが安心出来ない? 信用出来る相手だから安心出来るんだろうが?」
呆れる円城を、二人は逆に呆れた顔で眺めた。
何だか残念そうなモノを見る目に、円城は不愉快な気分になってくる。
「何だその目は。違うって言いたいのか?」
「違うね」
クェイガーはそう断言すると、手近な箱からナイフを拾い上げる。
すると、いきなりレーヴェの喉元に突き付けた。
最初のコメントを投稿しよう!