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ロスト・ナンバー #2
円城が無意識下で使っていたバニシングナックルとは、暴走状態の念動力を殴りつけた先の相手に叩き込んでいただけだったのだ。
だが、近接戦闘に置いてこれ程厄介な攻撃も少ない。
物理防御不可能、射程範囲不明。
ただひたすら対象に撃ち込まれる不可視の一撃。
身体能力が飛び抜けている円城の拳をいなしながら、初見でそれを見切るのは至難の技と言える。
そんな能力も超能力の中では一つの能力にしか過ぎない。
サイキックソルジャー、エスパーと呼ばれる超能力者は、様々な能力が蔓延るこの世界でも思いのほか希少な存在なのだ。
「とりあえずよ。 俺をタコ殴りにした礼は倍返しだ。その後で、折角脱出した俺達とやらを、再び顎で使おうとしてる奴とのいきさつを教えて貰おうか?」
歩きながら拳を鳴らす円城の顔には、邪悪な笑みが張り付いている。
水を得た魚のように見えるのは錯覚でないであろう。
シュードバッハは能力を指摘した事を後悔した。
昔から、円城が厚顔不遜だった事を思い出して毒づく。
「とりあえず……十発殴らせろ」
「相変わ■ずの短絡馬鹿ですね。こんな無駄なやり取■に時間を割くなんて。何故人の話に耳を貸さない?!」
「何でてめぇーの指図を受けなきゃならねぇーんだよ? 俺の進む道は、俺が決める!」
円城はそう宣言すると拳を振り上げた。
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