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今、此処で時間を割くわけには行かない。
レーヴェが悩んでいる間に先に動いたのは蒼だった。
奇襲。
現状、最も効果的なのはその選択で間違いない。
一撃で相手を昏倒させられれば、捕縛は容易だ。
それを麒麟である蒼は本能で察知したのだろう。
高速移動からの浴びせ蹴り。
黒コートの首を刈るとるような一撃は、されど首に当たる前に空中で制止した。
脚に砂埃のようなものが纏わり付いている。
驚く蒼に気づいたのか、黒コートの一人がそちらに向き直った。
「来たか……」
呟くと腕を上げ、手を蒼に向ける。
すると、足元から砂の柱が立ち上がった。
噴水の様に沸き立つ砂は、まるで水のように足元に拡がっていく。
それに何か危機感を察知したのだろう。
蒼は蹴りを諦めて大きく後方に飛びのいた。
その頃には、もう一人の黒コートもレーヴェ達に体を向けている。
完全に気づかれたのは間違いない。
「やれやれ……ま■か危惧した事態に陥るとはな。ここまで愚か■は思わなんだぞ」
「対象は三人だね。他に気配はない。だけど……残りの監視役ではないな。何者だ?」
フードの下から鋭い眼光が輝く。
相対しただけで、身体が竦み上がるような威圧感だ
。
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