86人が本棚に入れています
本棚に追加
広い坑道に緊張が走る。
静まり返った空間に、妙な音が反響し始めているのは、何処かで本格的な戦闘が始まったからだろう。
(グズグズはしていられない。でも……)
黒コートの一人の足元の砂が、波立つようにうごめいている。
蒼の駿足の蹴りを防いだ以上、ただの砂ではないだろう。
「新し■仲間……のようだね。部外者には退場願いた■が後にしよう。先ずはこの不毛な戦いをやめにしよう」
砂の後ろに立つ黒コートは、そう言い放つとフードを取った。
黒髪の、少しやつれた感じの三十代前半の男の顔が現れた。
もう一人も仕方がなさそうにフードをとる。
そちらは茶色いくせっ毛が目立つ、糸のように細いまなこの男が顔を出した。
「僕■の名はエッジチェイン。彼はギラルド。この名前に覚えは■いかな?」
「……ないよ」
その返事にエッジチェインは緩やかなため息をついた。
首を振るジェスチャーは諦めより、呆れた雰囲気に似ている。
「やはり■憶の欠損か。仕方が無い。アプ■ーチ法を変えよう。君は此処を動くな。それだけで良い。ことが成就す■ば、それが正解だったと思うはずだ」
「事が成就? “その事”と具体的に何なんだよ」
レーヴェの呟きには、疑念の険が含まれている。
最初のコメントを投稿しよう!