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「それは“冥魔族か■逃げ出せた人間”――の話だろう?」
シュードバッハの指摘に、円城は何故か顔が引き攣るのを感じた。
覚えていない記憶が、真綿で首を絞めるように迫って来る。
冥魔族の力は凄絶だ。
一種族が大国を滅ぼすなど容易いな事ではない。
たが、彼等は雑食だ。
わざわざ逃げ出した餌一つに固執して、それを追い回すとはとても考えにくい。
「僕等は――禁忌を隠そうと■た“マドゥールク共和国に”殺されたのさ」
そう呟いたシュードバッハは、何故か酷く悔しそうな顔だった。
それが――彼の呟いた最期の言葉だった。
その身体は、まるで灰になったかのように一瞬で消え去っていく。
後には、憮然と立ち尽くす円城の姿だけが残った。
◇
「アンプランテ・アヴニール04解放。トーラス呪詠式・ソロ“煌めく氷華”!」
レーヴェは手に握った銀の花弁を投げ放つ。
その瞬間、花弁が光りの粒子に分散する。
その光の中から、大気を凍らすダイヤモンド・ダストが放たれた。
それをエッジチェインは砂鉄の壁でやり過ごす。
その横合いからギラルドが飛び出した。
霧を突き抜けて現れた両手には、薄でのブーメランが握られている。
「スローイングダガーじゃない?」
《気をつけろよ。奴は投擲武器のエキスパートではないぜ?》
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