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円城の声は全員の胸に突き刺さった。
人は犠牲の上に生きている。
それが食物や家畜、はたまた人間なのは言うまでもない。
だが……それを理解しているからこそ、言葉の意味は受け取る人間の価値観に委ねられる。
「くだ■ん。顔も知らない人間の為に、自分の命をドブに捨て■気か? 俺には理解出来んな」
ギラルドが飽きれた表情で異を唱える。
「この世は弱肉強食だ。力な■者が死に、力ある者が生き残る。暴力だろうが何だろ■が、それに抗う力がなければ蹂躙される■けだ。俺は死に抗う力と意志がある。それ■他者に否定される言われはない」
ガズンの声は鉄だった。
一切のブレがない。
武人ならではの明確な正道があるのだろう。
それらを聞いてレーヴェは立ち尽くした。
明確な意志。
明確な価値観。
記憶がない人間には、それが欠如している。
後は自分自身を支える人間性だけだ。
硬直するレーヴェとは違い、クェイガーは大きな溜息を吐いて頭を乱暴に掻きはじめた。
「やれやれ、痛い所をつくな~。俺は軍属の公人だ。自分の命を捨てても国益を守らなければならない……。それは記憶が無くても分かる事柄だな」
「ならやることは分かってるよな?」
円城が不敵に笑うと、クェイガーは苦々しそうに相槌を打つ。
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