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二人を見てレーヴェは拳を握りしめた。
《混声術式で遅延魔法を展開した。この距離でも戦闘は可能になったぞ?》
デルエペラの声が最終審判のように響く。
引くか進むか。
引けばもしかしたら、安穏な未来が待っているかも知れない。
だが、進むならばそこには死しか残っていない可能性が高い。
知らない大勢の犠牲の上に生きる未来を取るか、知らない大勢を救う為に、未来を捨てる覚悟で戦うか。
(ボクには守るべき者も……支えになる記憶も無い。なら……何を持ってボクは……ボクの本心を……覚悟を決めれば良いんだ)
唇を強く噛み締める。
何者にも囚われない円城。
記憶の無い祖国に命を賭けると言うクェイガー。
そんな決断を簡単に出来ないでいる自分。
矮小な自分を恥ずかしいと感じながらも、覚悟が出来ない。
『甘・え・る・な。今は太平の世でも、此処は理想郷でも無い。戦乱の時代にそんな甘ったれた考えが通用すると思うのか。 記憶が無い? 記憶が無いから戦禍から回避出来るのか? 記憶が無いから誰かが保護してくれるのか? そんなおめでたい考えで、これから生きていけると思うな』
頭の中に光が明滅するように、声の主のビジョンが浮かんだ気がした。
ぶっきらぼうで冷淡な顔の少年。
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