死者の行進 #2

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二人を見てレーヴェは拳を握りしめた。 《混声術式で遅延魔法を展開した。この距離でも戦闘は可能になったぞ?》 デルエペラの声が最終審判のように響く。 引くか進むか。 引けばもしかしたら、安穏な未来が待っているかも知れない。 だが、進むならばそこには死しか残っていない可能性が高い。 知らない大勢の犠牲の上に生きる未来を取るか、知らない大勢を救う為に、未来を捨てる覚悟で戦うか。 (ボクには守るべき者も……支えになる記憶も無い。なら……何を持ってボクは……ボクの本心を……覚悟を決めれば良いんだ) 唇を強く噛み締める。 何者にも囚われない円城。 記憶の無い祖国に命を賭けると言うクェイガー。 そんな決断を簡単に出来ないでいる自分。 矮小な自分を恥ずかしいと感じながらも、覚悟が出来ない。 『甘・え・る・な。今は太平の世でも、此処は理想郷でも無い。戦乱の時代にそんな甘ったれた考えが通用すると思うのか。 記憶が無い? 記憶が無いから戦禍から回避出来るのか? 記憶が無いから誰かが保護してくれるのか? そんなおめでたい考えで、これから生きていけると思うな』 頭の中に光が明滅するように、声の主のビジョンが浮かんだ気がした。 ぶっきらぼうで冷淡な顔の少年。
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