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「はっ! 戦争に参加したから死んだぁ? 戦争に参加したから死ぬとはかぎらねぇーだろうが!」
暗闇の海の国で、憤る円城の姿は酷く滑稽に見えた。
全員が静かに佇む中で、一人のピエロが動き回っているような場違いな空気が流れる。
それを窘めるようにクェイガーは口を開いた。
「死んだと考えるなら……エン。お前の方が確率は高いぞ」
「あぁ?」
「お前は滅んだ国にいた。それも原因の発端になった研究所にだ。それに……そこは冥魔族が流入したて来た場所でもある。マドゥールクで生き残った人口は何割だ? そんな惨状から自分だけ運よく助かったと思うのか?」
クェイガーの言葉に円城は呆れ顔になり……そして、シュードバッハの言葉を思い出した。
『僕等は――禁忌を隠そうとした“マドゥールク共和国に”殺されたのさ』
声が鮮明に耳に残っている。
死を前にした人間が、わざわざ嘘をつくものなのか?
円城は自嘲気味に唾を吐き捨てると、睨むように視線をクェイガーに移した。
「俺達が死人でこいつらも死人だとして、何を甦らせようってーんだ?!」
「邪神■ネメシスだ」
そう答えたのは亡者の如き声の主だった。
クンプトゥスの小鍵を使用したと語った事から、ガズン達と待ち合わせの時に聞いた鍵の持ち主と推測できる。
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