神に挑む者

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鏡が砕け散るのは一瞬だった。 甲高い音と共に呆気なく、黒洞の道化師の前で四散する。 砕けた鏡は、光り輝く破片となって召喚神殿から階下の広場に降り注いだ。 神殿下にいた冥魔族達は、愕然とした表情でそれを見上げる。 召喚神殿のゲートは、あっさりとその機能の大半を損失した。 それを軽く成し遂げた青年に、ゆっくりと道化師は向き直る。 刀を振り抜いた構えのガルンは、悠然と刀を構え直した。 「やってくれたな“黒き戦鬼”よ。我が防衛網を摺り抜けるとは妙な剣を使う」 「滅陽神流剣法だ。元々、神を斬る為の剣……まさか本当に神に使う時が来るとは思わなかったがな」 「人の身で、よくこの領域にまで足を踏み込んだものだ。だが……貴様は根底から考え方を改めるべきだ」 そう囁くように告げると、道化師はゆっくりと腕を掲げた。 すると手の中に妙な黒点が生まれる。 その瞬間、ガルンの第六感が警笛を鳴らす。 “顔の無い貌に見つめられた気配”。 それは、背筋に這い登る死の気配に似ていた。 その場から無意味に回避運動を試みたのは、幾千と言う修羅場をくぐり抜けてきた戦士の勘と言うしか無い。 ガルンが元いた空間に黒点が燈ると、いきなり空間がレンズに映る像のように歪んで見えた。
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