終焉を喚ぶ者 #2

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存在変質。 度重なる平行世界、異なる時間軸を渡る事により、その世界ごとの因果に染まって来た。 確率事象の因果律重複体。 様々な因果の果てまで到達しないで世界を繰り返し廻って来た結果、レーヴェは因果律を内包する特異点に変質していたのだ。 人が人のまま、高位存在に存在だけがシフトするのが存在変質ではない。 それは彼の闇主側の魔剣士。 それは彼の英雄騎士。 それは彼の勇者殺しの少女。 それは――彼の“黒き戦鬼”と呼ばれた少年。 全てが同じベクトルに変質した訳ではないのだ。 ただ、等しく言える事は、人でありながら人で無くなった存在だと言う事である。 「君の本来の目的は……ボクを使って擬似的に“アンゲイスの瞳”を精製する事」 “アンゲイスの瞳”。 それは魔術師用語で未来事象を確定する為に用いられる概念であり、ラプラスの悪魔と意味合いは近いものである。 道化師は甚くその模範解答を気にいったようだった。 「てめぇーら、俺にも分かる言語で話やがれ! つまりどう言う意味だ!」 横槍を入れる円城に、目を向けずにクェイガーが回答を提示する。 「つまり、こいつらは第四王女の代わりを、内緒で造ろうとしていたって事さ」 「……はっ?」 困惑する円城を見て、道化師は肩を鳴らして笑い出した。
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