82人が本棚に入れています
本棚に追加
暗闇を抜けた先は、見慣れた洞窟の最下層であった。
だだっ広い空間は石造りであり、その中心にはピラミッドに似た大規模な神殿が見える。
霊脈の集約点であり、異世界への門である最終目的地。
召喚神殿がそこにあった。
その場に着地してガルンは苦笑いを浮かべる。
身体から抜け落ちていく虚脱感。
冥夢の幻域の吸奪結界の効果だ。
(懐かしい感覚だな)
ガルンはゆっくり辺りを見回す。
逃げ出したサンドリガーの姿は見えない。
変わりに神殿近くには冥魔族と、餓鬼の姿が何体も見えた。
闇使いの特性を考えれば姿を隠すのは簡単な事だろう。
だが――精霊の眼を持つガルンの前には無意味な行為だ。
「闇に潜って神殿に向かっているな。それは阻止させて貰う」
走り出した背後に着地音が聞こえた。
一つ、二つ。
背後を振り返ると、そこにはガズンと外なる紫眼の姿がある。
「簡単には進めない……か」
その呟きの後に、遅れてギラルドが到達する。
「先には進ませんぞ、ガルン・ヴァーミリオン」
ガズンがゆったりと構えをとる。
中段に左腕を拳で出し、右腕を引いた構えだ。
彼には高速移動の特殊能力がある。
走って逃げるのは得策とは言えない。
ガルンはあっさりと迎撃を選択した。
ガズンを中心に右にギラルド、左に外なる紫眼がゆっくりと囲み込んで行く。
すると、外なる紫眼の足元の影から黒い長剣が飛び出してきた。
少々驚いた顔をしたが、それをあっさりと手に取る。
鈍く光沢のない黒い剣を、ガルンは冷ややかに眺めた。
最初のコメントを投稿しよう!