冥王の鼓動

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暗闇を抜けた先は、見慣れた洞窟の最下層であった。 だだっ広い空間は石造りであり、その中心にはピラミッドに似た大規模な神殿が見える。 霊脈の集約点であり、異世界への門である最終目的地。 召喚神殿がそこにあった。 その場に着地してガルンは苦笑いを浮かべる。 身体から抜け落ちていく虚脱感。 冥夢の幻域の吸奪結界の効果だ。 (懐かしい感覚だな) ガルンはゆっくり辺りを見回す。 逃げ出したサンドリガーの姿は見えない。 変わりに神殿近くには冥魔族と、餓鬼の姿が何体も見えた。 闇使いの特性を考えれば姿を隠すのは簡単な事だろう。 だが――精霊の眼を持つガルンの前には無意味な行為だ。 「闇に潜って神殿に向かっているな。それは阻止させて貰う」 走り出した背後に着地音が聞こえた。 一つ、二つ。 背後を振り返ると、そこにはガズンと外なる紫眼の姿がある。 「簡単には進めない……か」 その呟きの後に、遅れてギラルドが到達する。 「先には進ませんぞ、ガルン・ヴァーミリオン」 ガズンがゆったりと構えをとる。 中段に左腕を拳で出し、右腕を引いた構えだ。 彼には高速移動の特殊能力がある。 走って逃げるのは得策とは言えない。 ガルンはあっさりと迎撃を選択した。 ガズンを中心に右にギラルド、左に外なる紫眼がゆっくりと囲み込んで行く。 すると、外なる紫眼の足元の影から黒い長剣が飛び出してきた。 少々驚いた顔をしたが、それをあっさりと手に取る。 鈍く光沢のない黒い剣を、ガルンは冷ややかに眺めた。
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