不条理と言う名の奇跡 #2

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不条理と言う名の奇跡 #2

空間が歪み――世界が書き変わって行くさまは、まるで波紋が広がった後の水面に写る景色が、全くの別物に変貌したかのような様相であった。 ネメシスの名を知らしめるように、天罰を与えるべく怒りの波動が空間に浸蝕して行く。 ネメシスの神気にさらされた空間が、本来在るべき神域と変貌しつつあるのだ。 世界は神がいるだけで不条理な影響を受けていく。 それは物質、生命、精神全てに影響を与え、生きとし活けるモノの在りようを変えてしまう。 怒りに震えるネメシスを見て、ガルンは刀を正眼に構えて踏み止まった。 逃げ出したいと本能が泣き叫ぶが、怒りの感情でそれを全て飲み干して行く。 再び霊妙法を練り上げて行くが、圧倒的に時間が足らないだろうと言う諦めに似た予測が頭に走る。 (攻撃力だけなら神にすら並ぶ……だが、自分を刺し殺せる武器を持っていると知った場合、知らなかった時と比べれば警戒心は雲泥の差か……) 半身を失ったネメシスは荒々しく腕を向けた。 傷口からは一切血が吹き出していないのは神ならではか。 上げられた腕は、神露の一片を構成させているのだろう。 見えざる針。 認識出来ないと言うのは、知覚出来ないか理解出来ないと言うことになる。 前者はそれを見る観測能力の欠如を意味し、後者はそれが何なのか判別する知識の欠如を意味する。
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