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そもそもトーラス呪詠式魔術は速度優先の魔法だ。
そこまで大規模な魔術は仕込んでいない。
魔術の合わせ掛けで高位魔術を生み出すだけだ。
(一撃は……難易度が高いよ)
《そこを何とか頼むぜ……そろそろ……こっちは限界だ》
円城はヒビが入り始めたアームアーマーを見て舌打ちする。
円城自身の力とアフティの力を受ければ、並の武具の強度ならば一撃で砕けている。
よく持っている方だと考えるのが常道だろう。
《上の魔女と道化師は何とか俺が抑える。とにかく無茶でも無謀でも一撃頼むぜ!》
円城はそう伝えると低く体勢を構える。
前傾姿勢気味の体勢は、走り出すにはうってつけの姿勢だろう。
それを見てアフティはケラケラと笑い声を上げた。
『やれやれ……何やら仕出かし■いようだけど。君達では力不足だ■教えて上げよう』
そう言うと手を叩く。
叩いた振動が水面を伝うと、幾重もの波紋が浮かび上がる。
『我は望む。かつての仲間を。そ■は死人にして死人。廻る憎悪に囚われ虚ろな■』
宣言と共に幾重もの波紋の中心が噴き上がると、黒い塊を吐き出した。
水に滴る全身を覆い尽くす黒い外衣には見覚えがある。
その数――十六。
「……!?」
それを見て円城とレーヴェは絶句した。
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