不条理と言う名の奇跡 #2

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黒いフードコート姿はつい前に嫌と言うほど拝んでいた。 凶悪な敵として。 同じ境遇の犠牲者として。 “スタグナター【停滞者】”。 それがずらりと並んでいた。 「新手……?!」 レーヴェの顔が青ざめるのは仕方がない。 ヘルメキアでさえ持て余すのに増援が現れるとは。 「新手じゃ……ねぇ。こいつらは……今までの黒コートどもだ。何人か同じ顔をしてやがる!」 円城の苦虫を潰したようなうめき声が世界に虚しく響く。 『その通り! 彼らは今■での彼らさ。まあ、魂が無いから本物に限りなく近い偽物だけどね。ボ■は怨念の塊のようなものでね。生への執着……渇望と言う名の■念が集い、存在しない事象を望み尽くす事で“願■具現化能力”が発動している。恨みつ■みは対象が居てこそ想いが積もるものさ。適当に何かを想像しても、まともなモノは具■化出来ない。知っている――記憶にハッキリとあるモノこそ渇望しやすいだろう?』 死を間際に人は何を望むだろうか? 達観した、満足した死を迎える人間はどれだけいるか? 不慮の事故。 理不尽な病。 他者の悪意による死。 望まぬ非業の死を迎えた人間の最後の想い――それが寄り集まって生まれたモノは、酷く呪いに似た渇望の塊だった。
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