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無謀なやる気を出すマスターの気持ちを知って、デルエペラは少々認識を改める事にした。
《此処でマスターに朽ちられては俺もたまらん。勝率は低いが戦略を授ける》
「戦略?」
《マスターの自身の能力をフル活用する戦法だ。後はマスターの魔力が持つかどうかだが……。伸るか反るかだがどうする?》
「やらなきゃ死ぬんだ。死ぬのはやることやってからだよ!」
意気揚々と言い切る姿は、開き直ったか、やけっぱちか?
《何の相談かしらねぇーが、レーヴェの声はだだ漏れだぜ? 俺にも一枚噛ませろ》
唐突な円城の心の声にデルエペラは面白そうに笑いだした。
気弱な魔術師と、猪突猛進の喧嘩屋。
相手は世界を変える力を持つ魔王のようなものだ。
後世にその事実が知られれば、英雄譚の出来上がりかも知れない。
しかし――これは閉じた世界の死者達の夢物語。
世に知られるとすれば、それは冥王ネメシスが完全復活した時だけであろう。
だが――それは既に“黒き戦鬼”によって阻まれている。
これはただの祭の後の余韻のようなものだ。
この戦いは不毛な幕引き劇。
然れど、運命を弄ばれた人間達には戦う意味はある。
意趣返しと言う浅はかで衝動的だが――譲れない怒りの想いが。
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