不条理と言う名の奇跡 #2

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呪文を唱えながらレーヴェの顔が強張る。 大掛かりな魔術の為に、明らかにスピードでヘルメキアに勝てる訳がない。 案の定、ヘルメキアのグリモアライズ・ヒートリードはワンフレーズで完成する。 (間に合わない――) レーヴェは魔剣砲台の魔術を編みながら、絶叫したい焦燥が溢れ出す。 解き放たれる魔術群。 一撃で人体を吹き飛ばす攻撃は、されどレーヴェとヘルメキアの中間点で爆発した。 アフティが露骨に不愉快な声を搾り出す。 『きっ■まぁ!! 邪魔をするな■敗作が――!!』 爆発の中心からボロボロの円城が姿を現す。 テレポートで攻撃射線に無理矢理身体を滑り込ませて、攻撃を防いだのだ。 魔術実行中のレーヴェを移動しては意味がない。 確実に攻撃を遮る効果的な方法を、円城はこれしか思いつかなかったのだ。 「こいつは……俺が抑えるって……言ったろうが! やっちまえレーヴェ!!」 愛想笑いを浮かべているが、明らかに円城の身体は限界だ。 フォースフィールド【力場】で完全な直撃は防いだが、擬似的に備えた鎧の腕は砕け散り、腹部と右太股は大きくえぐれている。 致命傷なのは人目で分かる。 レーヴェは半泣きになるのを堪えながら、呪文の詠唱を続けて行く。
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